症状や原因を含め、両側性メニエール病の特徴を紹介いたします。
通常のメニエール病は、一側だけに症状が現れます(一側性メニエール病)。
しかし、全体の30%程度において、両側に症状が現れます。両側にメニエール病の症状が現れている場合、両側性メニエール病を疑います。
メニエール病の主な症状は、めまい・難聴・耳鳴りの3つです。これらが関連しつつ、不規則に反復することがメニエール病の特徴です。
具体的な症状は、回転性のめまいに加え、耳の閉塞感や音が響く、音が割れるなどの聴覚症状です。これらが両側に現れるメニエール病を両側性メニエール病というのです。
両側性メニエール病は、難聴の程度が高く、進行が早いといわれています。気になる症状がある方は早期に検査と治療を受けたほうがよいでしょう。
両側性メニエール病と一側性メニエール病の原因に、大きな違いはないと考えられています。そのため、両側性メニエール病の診断に特別な基準はありません。一側性メニエール病と同じ基準を用い診断を行います。
しかし、両側性メニエール病になりやすい人には特徴があるので、この点は理解しておくと良いかもしれません。
複数の研究論文から両側性メニエール病の症例を集めてみました。
昭和48年にめまい発作を反復し,発作に伴い右聴力の変動を認めた.49年もめまい発作を反復し,同程度の右聴力の変動を認めた.50年,51年とめまい発作は軽快し,右聴力は約60dBの水平型感音難聴を示した.52年9月より再び回転性めまい発作が激しくなり,今度は左耳に耳鳴,難聴の変動を伴うようになった.その後めまい発作は程度が軽くなり,54年にはめまい発作に伴う聴力変動はあまり認めず,現在は両耳とも,約60dBの水平型感音難聴を示している.本症例は,右側メニエール病発症後,約4年9ケ月後に左側が発症した,いわゆる両側メニエール病と考えられる.
荻野仁・佐野光仁・久保武・松永亨・内藤儁・松永喬「両側メニエール病-症例と診断基準について-」耳鼻臨床75:増3;1227~1228,1982
昭和45年頃より,左難聴,耳鳴を伴う回転性めまい発作を反復し,某耳鼻科にて左メニエール病として治療をうけていた.1週間前から,左難聴,耳鳴を伴う回転性めまいが毎日おこるようになり,当科受診した.一般検査には軽度貧血を認める他,著変はなかった.聴力検査では,左耳に約50dBの水平型感音難聴を認めた.ABLBテストで補充現象陽性,温度検査で左CP,振子様回転検査では末梢型を示した.左メニエール病として入院加療をおこなった.めまい発作は50年11月には頻発し,11月下旬右難聴が出現し,11月26日の聴力検査では両耳に同程度の感音難聴を認めた.しかし1ヶ月後(12月26日)には,右聴力は改善した.51年中ごろからめまい発作が頻発し,同時に右難聴も出現した.現在まで両耳とも軽度の変動を示しながら経過し,現在はめまいは軽快し,両耳とも約40~50dBの水平型感音難聴を示している.本症例は,左側メニエール病発症後,約5年後に右側が発症した,両側メニエール病と考えられる.
荻野仁・佐野光仁・久保武・松永亨・内藤儁・松永喬「両側メニエール病-症例と診断基準について-」耳鼻臨床75:増3;1227~1228,1982
昭和53年4月,左難聴,耳鳴を伴う回転性のめまい発作が出現.めまい発作時には,嘔気嘔吐も伴った.同様のめまい発作は7月,8月にも出現した.左難聴,耳鳴が持続するため当科受診した.一般検査,平衡機能検査には著変なく,聴力検査では,低音障害型感音難聴を認めた.53年11月はじめ,突然右難聴出現した.めまいはなく,その時難聴を認めた(53年11月8日).その後約1ケ月の経過で右難聴は回復した.以字めまい発作とともに,左耳の聴力変動出現し,一方右耳は現在まで聴力変動は認めていない.本症例は,左メニエール病に右突発性難聴が合併したものと考えられる.
荻野仁・佐野光仁・久保武・松永亨・内藤儁・松永喬「両側メニエール病-症例と診断基準について-」耳鼻臨床75:増3;1227~1228,1982
両側性メニエール病は、メニエール病の罹患期間が長いほどなりやすいといわれています。
一側で始まったメニエール病でも、長期間にわたり発作を繰り返すと、反対の耳の聴力が衰えるなど、両側になることがあります。神経症的な傾向が強いといわれることもありますが、いずれにせよ両側に症状が現れるので辛い症状に悩まされることになります。
また、高齢発症者は両側性メニエール病になる可能性が高いといわれています。両側性メニエール病は、難聴の進行が早く、日常生活に支障きたす可能性が高くなるため、これらの条件に当てはまる方は注意をしたほうが良いかもしれません。